台風16号:胸まで水「怖い」
浸水し畳やテーブル、扇風機などがひっくり返った民家の
応接間=16日午後2時10分、東村慶佐次(下地広也撮影)
浸水の被害に遭った店舗を片付ける住民ら
=16日午前9時ごろ、本部町渡久地
床上60棟「ベッドが浮いた」
■東
東村の床上浸水は慶佐次25棟など少なくとも60棟にのぼった。高潮で押し寄せた砂で、国道331号が通行止めになる被害も出た。
同村の慶佐次川は満潮時に川が氾濫し、集落内の多くの民家が浸水。川沿いの小規模多機能ホームも床から約20センチの高さまで浸水し、入所者と職員10人がボートで避難した。
職員の池原浩幸さんは「午前6時ごろ、あっという間に潮位が上がった。こんなことになると思わなかった」と驚いたが、全員が無事だったことを喜んだ。
同村慶佐次の津波薫さん(50)は経営する土建会社のトタン屋根が強風で飛び、自宅の窓ガラスを割った。「眠れずに起きていたら明け方、ものすごい音がした。仕事道具が水に漬かり使えない」と肩を落とす。「寝ていたらベッドが浮き上がってひっくり返った。家はもうめちゃくちゃだ」と困惑する男性(69)もいた。
川田では約1トンの漁船が流され、県道に打ち上げられた。
川田に住む女性(64)は午前6時半ごろ、夫(74)をおぶった近所の男性と共に胸まで漬かりながら避難。「40年住んでいるがこんなことは初めて。津波みたいで恐ろしかった」と声を震わせた。
市場浸水「50年住んで初」
■本部
本部町渡久地では満名川があふれ、周辺の店舗や民家に大量の水が押し寄せた。町は午前7時に渡久地など230世帯に避難勧告、消防が15人をボートで避難所へ搬送した。
自宅が満名川沿いの島袋正常さん(50)は「風呂場の排水口から水が逆流し、外からも入ってきた。2階に逃げるのが精いっぱい」と流れ込んだごみやドロを見て途方に暮れた。
町営市場で文具店を開く友寄隆央さん(37)は午前6時ごろ、市場向かいの自宅から、川の水が岸壁を越え、市場が浸水する様子を目撃。店ではパソコンや商品が水没し「廃棄するしかない」とやるせない表情だ。
日用品店の男性(55)も「冷蔵庫の中は全部駄目」とため息。
瀬戸物店の嘉味田静江さん(81)は「50年近く市場にいるが、こんな被害は初めて。保険が適用できるか分からないが、写真を撮ってから」と後片付けに精を出した。
沖縄タイムス