沖縄で幻の作品 「VISION 2013 城への招待</i
8役を演じ分け、複雑な恋愛物語に来場者を引き込む篠井英介=26日、読谷村文化センター鳳ホール(崎原孫雄撮影)
物語と調和する演奏を聞かせた(左から)與那嶺理香、大城英明、澤村康恵=26日、読谷村文化センター鳳ホール
(崎原孫雄撮影)
クラシック音楽と戯曲を組み合わせた舞台「VISION 2013 城(ぐすく)への招待」が26日、読谷村文化センター鳳ホールであった。
欧州で人気作ながら日本では現在ほとんど公演されない幻の作品を沖縄でよみがえらせ、1人で登場人物8人を演じ分けた篠井英介の“八変化”により、舞踏会で繰り広げられる悲喜劇に来場者を引き込んだ。
「城への招待」はフランスの作家ジャン・アヌイの戯曲。
今回は欧州で上演された際のF・プーランクによる付随音楽とともに、與那嶺理香が書き起こした脚本によって演じられた。
演奏は與那嶺(バイオリン)、澤村康恵(クラリネット)、
大城英明(ピアノ)。
篠井は、城の主であるデメルモルト婦人による語りを中心に城に住む双子の兄弟オラースとフレデリック、フレデリックの婚約者ディアナ、オペラ座の貧しい踊り子で美しいイザベルらをめまぐるしく演じ分ける。
オラースは城での舞踏会で芝居を仕組み、フレデリックにイザベルを接近させて婚約を失敗させるよう仕向ける。
しかし芝居に気付いたデメルモルト婦人の気まぐれで舞踏会は混乱。
最後は彼らの本当の思いに気付いた婦人の計らいで、意外な者たちの仲を取り持つことになる。
篠井の巧みな演技と、ストーリーの転換点で効果的に挿入される音楽により、複雑に絡み合う人間関係を的確に描き出し、来場者を物語に引き込んだ。
舞台装飾も独特の雰囲気を演出する。
背後で読谷山花織が存在感を示し、灯ろうとして使った焼き物の骨つぼから漏れる明かりが舞台をほのかに照らす。
ステンドグラスは物語に登場する、清濁を併せ持つ女たちの複雑に絡み合う人間模様を表現するように輝き、演奏と演技を引き立てた。
(宮城隆尋)
琉球新報