肝硬変に再生医療 ハートライフが臨床研究
ハートライフ病院(中城村、奥島憲彦院長)は、進行した肝硬変の患者から、さまざまな細胞に分化する「ヒト幹細胞」を採取し、患者に再び戻すことで肝硬変を治療する最先端の再生医療を開始した。
アルコールや肥満など生活習慣病による肝硬変を対象にした臨床研究では国内初の取り組み。安全性などが確認されれば、生体肝移植以外に治療法がないといわれる肝硬変の有力な治療法として注目される。
(新崎哲史)
ヒト幹細胞は人工的に作ったiPS細胞などと同様、さまざまな細胞に分化し、安全性が問われるため、臨床研究では、厚生労働省の厳格な審査が必要。再生医療は他の疾患でも進んでおり、厚労省が研究を承認した民間病院としては全国2例目。
ハートライフは先月18日、肝硬変の50代男性に対し治療を開始。腰の骨から採取した骨髄液を分離してヒト幹細胞の「単核球」を取り出し、それを再び男性に点滴で投与した。
単核球の投与で、機能しなくなった肝臓部分を溶かし、肝硬変が改善するメカニズムを想定。山口大学などで先行研究があり、C型肝炎の進行性肝硬変でウイルス消失など19例の回復事例がある。
治療時間は6~7時間と短時間で、費用も移植手術の10分の1程度と患者負担が少ない。自身の細胞を使うため免疫拒絶もないとされる。一方、手術には肝臓がんや他のがんがない、など十数項目の条件に適合することが必要だ。
1日に県庁で会見した同病院の佐久川廣副院長は「今後、2年かけて10症例の治療と改善具合を検証する。沖縄に多い生活習慣病の肝硬変治療法として安全性や有効性を追究したい」と話した。
県の「先端医療技術産業化研究事業」を同病院が受託し、2010年度から施設整備や検査技術向上に取り組んでいた。事業費は3年で約6億円。
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肝硬変 アルコールやウイルスにより肝細胞が壊れ、再生せず肝機能が低下した状態のこと。肝がんや消化管出血などを合併する。全国的にはB、C型肝炎ウイルスを原因とするものが7割を超えるが、県内は生活習慣病原因が5~6割に上る。ハートライフ病院の患者統計ではアルコール原因37%、肥満関連15%。県内では男女とも20代の早い時期に飲酒が習慣化し、30~40代で進行性肝硬変となる患者もいる。
琉球新報