[我ら“うちなーんちゅ”米ロス発](28) 小山田真さん
「慈善活動の割合が、今は映画の仕事より多くなっていますが、長い期間をかけて国際交流のプログラムを次の世代に渡したら、また全力で映画に取り組みたい」と話す小山田さん
=ロサンゼルスのリトルトーキョー
2003年、ハリウッド映画「ラストサムライ」で、初出演ながら大役に抜てきされた小山田真さん。その後もディズニー映画「カンフー。プリンセス・ウェンディ・ウー」の主演を務めるなど、俳優やプロデューサーとしても多数の作品に携わっている小山田さんには、もう一つ、慈善活動家としての顔がある。
2012年には、アメリカ国務省の招待で、日本各地で講演会のスピーカーを務めた。「アメリカンドリームを追いかけて」と題されたこの講演は、日本の若者たちにアメリカへ関心を抱くだけでなく実際に訪ねてみてほしい、と呼び掛けることが目的。沖縄県内でも沖縄国際映画祭の会場や名護市立中央図書館で、中学生や高校生を相手に熱く訴えた。
彼がそこまで日米の懸け橋となるべく力を入れているのは、彼自身がかつて留学生だったことも一因だ。
「子どものころから映画好きな父の影響で、ハリウッドのアクション映画を見ていました。自分も俳優になりたい、その憧れが高じて、岡山の高校卒業後に単身アメリカへ渡りました。ハリウッドに挑戦するためには自分に課した目標が三つありました。英語を習得し、アメリカ文化に慣れ、武道の大会で全米優勝するということです」
小山田さんは短期間でその目標をすべて達成し、渡米2年後には「ラストサムライ」のオーディションに合格したのだ。
「根本には後悔したくない、という思いが常にあります。沖縄で話をさせていただいた時に感じたのは、アメリカに向けての1歩が踏み出せないという学生さんたち、そして送り出すのをちゅうちょしている親御さんたちの気持ちでした。でも、興味があるなら後悔してほしくないと、僕は自分の経験を踏まえて話をさせていただきました」
頭の中で想像している外国のアメリカと、実際に目で見て肌で感じるアメリカには大きな違いがあり、きっと安心するはずだ、と小山田さんは言う。
「たとえば僕たちが暮らすロサンゼルスには、多くの日本人がいて、リトルトーキョーやトーランスといった日本人街があり、日本の祭りが開催され、日本食レストランや日系スーパーにもまったく不自由することはありません。それは来てみないと分からないことだし、最初のアメリカ体験は旅行でも十分です」
さらに、小山田さん自身が渡米して来た当時に比べ、アメリカ人の日本への興味の度合いが高まっていると話す。「アニメのエキスポが大々的に開催され、日本のアニメ好きなアメリカ人が一堂に会する様は圧巻ですね。本当に日本好きなアメリカ人が増えたと思います」
小山田さんは昨年3月に沖縄を訪問した際、土地の魅力、特に人々の温かさにすっかり魅せられ、早くも9月には再訪を果たした。
「沖縄の方々は団結力があって情熱的です。若者もエネルギーがあり、気さくで前向きな印象を受けました。彼らには、メディアの情報だけを信じるのではなく、アメリカを実体験してほしいと望んでいます。今後も、那覇市に事務所を置く“沖縄コヤマダ国際協会”を通じて、沖縄の若者の国際交流の支援を推進していきます」
(福田恵子・ロサンゼルス通信員)
沖縄タイムス