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「ぺーちんの恋人」 笑いで描く (沖縄)

2013年8月24日 - スタッフ公式
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「ぺーちんの恋人」嘉数の初監督作品
 笑いで描く芸能の課題

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テーマ曲の群舞を踊る出演者たち=18日、
浦添市の国立劇場おきなわ
 国立劇場おきなわ企画公演の沖縄芝居「喜劇 ぺーちんの恋人」(嘉数道彦脚本・演出)が17、18の両日、浦添市の同劇場で上演された。嘉数が同劇場芸術監督に就任して初の作品。モリエールの「守銭奴」を、廃藩置県後の沖縄で古典芸能を守ろうとする男の物語に翻案した。
時代が変わる中、新たな挑戦をしながらいかに伝統を守るかという現代に通ずる課題を、笑いを通して描いた。
 廃藩置県で禄(ろく)を失った佐久眞親雲上(ぺーちん)(宇座仁一)らは、宮廷で踊っていた御冠船踊(うかんしんうどぅい)を庶民に見せるが理解されない。
ある日、佐久眞は息子金松(平敷勇也)の恋人チル小(呉屋かなめ)に一目ぼれしてしまう。チル小好みの新しい踊りを作って振り向かせようと、父と子の勝負が始まる。
 昨年から沖縄芝居に意欲的に出演している平敷が、創作舞踊に興味を抱き父に反発する金松をみずみずしく演じた。百姓出身のチル小は庶民のエネルギーを象徴する存在だ。
稽古から周囲を明るくさせていた呉屋は、はまり役だった。
 にぎやかなテーマ曲は嘉数が詞を、仲村逸夫が曲を書いた。「ぺーちん、ぺーちん、我んねーぺーちん」と耳から離れない。「加トちゃんぺ」を連想させる阿嘉修の振り付けは衝撃的なくらいコミカルだが、最後は不思議な感動を与えた。
出演者が客席後方から舞台に続く花道を渡って登場したり、チル小が客席に座って演じたりと身近に感じられる演出も良かった。
 佐久眞と金松がそれぞれ創作を披露する場面で、本当は古典を踊りたい佐久眞は葛藤のあまり半狂乱になり、舞台を去る。
楽屋で独り組踊の稽古をする姿は伝統を守る重さがにじみ、客席から拍手が起こった。
 佐久眞の娘真鶴(花岡尚子(しょうこ))が、御冠船踊を習いたいと懇願するのも印象的だ。
今では多くの女性舞踊家が活躍しているが、当時は考えられなかった。組踊は現在も女性の出演の機会が少ないが、数十年後はどうなるのかと想像せずにはいられない。
 伝統芸能が抱える永遠の課題を、笑いを通して描いてしまう若手・中堅たちはたくましい。
観客が琉球芸能に影響を与えてきた歴史にもあらためて気付かされた。幕開けと最後の場面で佐久眞たちは「どこまでもいつまでも歩いてみせる」とつぶやく。観客と報道も笑って終わりではなく、実演家と刺激し合いながら歩む存在でありたい。
 その他は高宮城実人、嘉陽田朝裕、阿嘉、石川直也、宮城茂雄、金城真次、川満香多、大浜暢明(のぶあき)、謝名堂奈津、浦崎えりか、上地美妃、古謝渚。地謡は仲村、玉城和樹、和田信一(のぶかず)、池間北斗、入嵩西諭、森田夏子、久志大樹。監修は宜保榮治郎、演出助手は新垣悟。
 (伊佐尚記)
  琉球新報

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