「ウフユミ・シヌグィ」豊穣の祈り 独自性守る
石嘉波集落の「ウフユミ・シヌグィ」で降臨した神様の鎮座するハギヤーの前でウンサク(神酒)の杯を受け、無病息災と悪風払いを受ける参加者=本部町瀬底
【瀬底島=本部】
町無形文化財指定の瀬底島の「ウフユミ・シヌグィ」が8月24日から28日(旧暦7月18日から23日)にかけて、旧瀬底村の集落と、島北東部の石嘉波(イッチャファ)集落のそれぞれで行われ、無病息災と五穀豊穣(ほうじょう)を祈った。
瀬底島には蔡温の山林政策で、1736年に対岸の本部間切から島の北東部に移された石嘉波集落があり、旧瀬底集落とは現在でも祭祀(さいし)行事を別々に実施している。拝所も異なり、様式にも違いが見られる。
旧瀬底集落では、ウフユミ(大きな弓)で邪気を追い払い、シヌグィではノロを中心に置き、女性神人を筆頭に臼太鼓をたたきながら古謡を歌い、太鼓の音で悪風を払うのが習わし。敬虔(けいけん)な神への祈りが、無病息災と豊穣をもたらすとされている。
石嘉波集落の「ウフユミ・シヌグィ」は、ウチバラと呼ばれる聖域にハギヤー(陰家)を設け、金城勇さん(73)、清子さん(72)夫妻が、不在の神人に代わり、先人への感謝の気持ちを込め、神へ御願を行った。
かつて7人いた神人も今は該当者がなく、古式行事を正しく伝えるすべが薄くなっている中、金城家の末裔(まつえい)が絶やさないように取り組んでいる。
普段からウチバラの清掃などを行っている金城さん夫妻は「子孫、集落の繁栄をお願いした。神様から目に見えないたくさんの褒美を頂いた」と継承に尽力。「気持ちが充実するよ」と奉仕に汗を流している。
最終日の28日には、近くのシヌグイ毛にもハギヤーを設け、神酒やごちそうを供え、手を合わせた。集落の代表が「ヨーハー、ヨーハー」の呪文を3回唱え、竹の枝と太鼓を打ち鳴らす「はらいの儀式」を行い、集落の人々の健康と豊作を祈願した。
同集落出身で、祭祀にも積極的に取り組む金城清勇さん(67)=沖縄市=は「集落出身者である誇りと、郷里の先輩方との和合が楽しい」と語った。
(島袋仁明通信員)
(写図説明)石嘉波集落の「ウフユミ・シヌグィ」で降臨した神様の鎮座するハギヤーの前でウンサク(神酒)の杯を受け、無病息災と悪風払いを受ける参加者=本部町瀬底
沖縄タイムス