神人減少、どうする継承 大宜味・塩屋湾のウンガミ
アサギの下で伝統のお神酒やカボチャを食べた後、
歌に合わせて踊る区民=大宜味村屋古
【大宜味】
国の重要無形民俗文化財で約400年の歴史があるとされる村塩屋湾のウンガミ(海神祭)。
神事をつかさどる神人(ハミンチュ)が減り、伝統行事の中心となる区民の高齢化も進んでいる。「ウンガミをどう引き継いでいくか」。今年のウンガミでは、神事を執り行うアサギの下で、話し合う区民の姿があった。継承への意識が高まっている。
(北部支社・榮門琴音)
■3人が90歳超え
塩屋湾のウンガミは8月25日から2日間、塩屋湾周辺の集落で催された。今年のハミンチュは7人で、約25年前の22人(1986年発行「塩屋・ウンガミ」より)から大幅に減った。7人中3人は90代、2人は80代、2人は60代と高齢化が進み、後継者もなかなかいないのが現状という。
塩屋区文化部の米須邦雄さん(61)は「こればっかりはどうしようもない。ハミンチュが生まれることを期待するしかない」と話す。
村内には塩屋湾周辺の集落のほかにもウンガミがあるが、ハミンチュの減少に伴い、儀式が消滅したり、省略されているのが現状だ。米須さんによると、謝名城区では儀式が簡素化され、田嘉里区では区長らの主導で続けられているという。
古式ゆかしいウンガミは維持できるのか。
米須さんは「塩屋湾のウンガミは何とか形に残っているが、謝名城や田嘉里の姿は10年後や20年後の塩屋湾のウンガミの姿かもしれない」と危機感を募らす。
■「歌をテープに」
神事以外の伝統行事を把握する区民の高齢化も進んでいる。
集落の一つ、屋古区では伝統行事の準備から運び方まで、口伝えに頼ってきた。最終日の26日には、詳細を把握する年長の宮城ハツさん(95)から積極的に動きを習い、「歌をテープに残した方がいい」「いろんな記録媒体に収めよう」と提案する区民の姿があった。
屋古区の真謝清区長(64)によると、「どう伝えていくか具体的に話が出てきたのは今回が初めて」という。
宮城さんは「この集落の人たちは協力的で肩の荷が下りた感じがする。失われたらどうなるかと心配だ。でも、これは誰もができるもんだよ」と語る。
過疎化が進む中、宮城さんは「なるべくなら元から集落にいる人が伝えていってほしい。今までもみんなそうしてきているから」と希望する。
区会計の山城一美さん(59)は「高齢化をひしひしと感じる。区民は伝統行事をずっと見てきているから、少しずつ補っていきたい」と話した。
沖縄タイムス