「ユングトゥ」の継承を 奄美沖縄民間文芸学会
左から、登野城のユングトゥを実演した小波本英行氏と、
竹富島のユングトゥを実演した高嶺方祐氏
=28日午後、大浜信泉記念館
大勢の来場者が熱心に聞き入った奄美沖縄民間文芸学会
の2013年度八重山大会=28日午後、大浜信泉記念館
シンポで活発な意見 竹富や登野城に伝わる実演も
奄美沖縄民間文芸学会(代表・狩俣恵一沖縄国際大学教授)の2013年度八重山大会が28日、大浜信泉記念館で開かれた。同日午後からは八重山郷土史家の大田静夫氏が「八重山歌謡」について講演した後、シンポジウムでは八重山文化研究会の石垣博孝氏が「八重山のユングトゥ」をテーマに基調講演を行い、高嶺方祐、小波本英行氏が竹富島や登野城に伝わるユングトゥを実演。
パネルディスカッションではユングトゥについて活発な意見を交わし、議論を深めた。
同学会は奄美、沖縄、宮古、八重山の各島々で開催されており、八重山大会は2007年8月以来6年ぶり。
講演で大田氏は「神と対座し、神をたたえるユングトゥは『うた』の起源に通じるものがあるのではないか。やがて神々への個の願いが共同体全体に転嫁され、アヨーやジラバ、ユンタなどを生み出したと思う」と話し、実演を交えながらユングトゥからアヨーやユンタ、ジラバへと進んでいった経緯を説明した。
基調講演で石垣氏は「祭事儀礼の場で多くのユングトゥが生まれ、残っていくものとその場で忘れ去られていくものがあったが、即興性や独自性、品格があることも大事。言葉のつなぎをみると、ユンタジラバから発想を得ているとみられるものがいくつもある」と各地区に残るユングトゥを紹介。
その上で、「祭事儀礼の場が少なくなり、ユングトゥの継承がむずかしくなっている。意識を持って、今持っているユングトゥを後輩に伝えていく、少しでもユングトゥを継承できるように努めてほしい」と呼びかけた。
続いて行われたパネルディスカッションでは狩俣代表がコーディネーターに大田氏と慶應義塾大学の伊藤好英氏、立命館大学の真下厚氏がパネリストを務め、「1人語りの文芸—ユングトゥをめぐって—」をテーマに意見を交わし、会場からも意見が飛び交うなど、ユングトゥの発祥などについて議論を深めた。
また、午前中には琉球大学大学院のラドゥレスク・アリーナ氏が「琉球列島の御嶽と山岳信仰」、育成保育カレッジ学院専門学校の宮城葉子氏が「わらべ唄の伝承と幼児教育での現場」、県立芸術大学大学院の佐々木和子氏が「植物をめぐる八重山歌謡の表現」、八重山文化研究会の石垣繁氏が「西表島・祖納村の節祭」をテーマにそれぞれ研究発表を行った。
八重山毎日新聞