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【集落(スマ)を歩く】⑩ 平良狩俣(上) (宮古島・沖縄)

2013年11月2日 - スタッフ公式
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【集落(スマ)を歩く】⑩ 平良狩俣(上)
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祭祀 「ナツブー」 ではアブンマ (右) がニガイ、 神歌
など神事を行った=7月28日、 狩俣のウプグフムトゥ
15年ぶりの神女誕生
 宮古島市平良の狩俣集落で、 7月28日から4日間にわたり 「ナツブー」 の祭祀が行われた。 この祭祀は、 粟の収穫と向こう1年間の五穀豊穣を祖先の神に感謝する農耕儀礼の一つ。
ウプグフムトゥ (大城元) では、 祭祀の中心となる神女・アブンマが15年ぶりに誕生したことから 「ナツブー」 が復活した。 期間中には 「ファーマー」 と呼ばれる子孫らがウプグフムトゥを訪れ、 神に祈りを捧げる姿が見られた。
 平良市史第9巻資料編 (御嶽編) には、 「狩俣には祭祀儀礼集団としてムトゥの組織がある。 ムトゥと呼ばれている所は9カ所あり、 その中でウプグフムトゥ、 ナーマムトゥ (中間元)、 シダディムトゥ (志立元)、 ナーンミムトゥ (仲嶺元) のユームトゥ (四元) が主な祭場となる。 さらに全体の最高位に位置し、 全ての祭事の中心となるのがウプグフムトゥであり、 村落全体の神女組織で最高位にあるアブンマ (大母) もウプグフムトゥにいる」 とある。
 そのウプグフムトゥで、 祭祀を中心として執り行っていたアブンマが1997年に引退した。 98年以降、 アブンマを引き受ける担い手が出なかったことから祭祀行事は行われなくなった。
長い歴史で引き継がれたアブンマら神女の不在について、 住民たちは 「神を敬い強いつながりを持つ共同体の崩壊にもつながりかねない」 と危機感を抱く。 宮古島の神と森を考える会が2011年11月に開催した 「狩俣の神・人・自然」 をテーマにしたシンポジウムでは、 元神女から 「神くじで神役に選ばれても引き受けない」 などと嘆く声があった。
 先が見えない状況の中で、 今年に入ってから明るい兆しが見えてきた。 神くじにより選ばれた久貝則子さんがアブンマの大役を引き受けた。
 アブンマの誕生により、 復活した 「ナツブー」 の祭祀行事。
久貝さんは、 先輩のオバー (神女経験者) たちから神事の段取りを教えてもらいながらニガイ、 神歌などを行った。 初日を終えた取材では 「神事は難しいと思っていたが、 考えていた以上に難しい。 ムトゥの祭祀は重要であり、 先輩たちがやってきたことを引き継いでいくことは大事なこと。 少しずつ覚えながら前向きにやっていきたい」 と意欲を見せていた。
 狩俣のムトゥはナーンムトゥのほかは集落後方の丘陵に沿ってある。 地元では、 丘陵部について 「カンヌヤマ (神の山)」 又は 「カンヌゴウ (神の郷)」 と呼ばれる聖地で、 みだりに足を入れてはならない神域とされている。
 (文・写真 伊佐次郎 毎月第1・3木曜日掲載)
  宮古新報

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